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2017年6月26日

産総研、原子の形を変えて超省エネ磁気メモリを実現する原理を発見

 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の佐橋政司プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として、大阪大学の三輪真嗣准教授、高輝度光科学研究センターの鈴木基寛チームリーダー、東北大学の辻川雅人助教、産業技術総合研究所の野崎隆行研究チーム長、物質・材料研究機構の大久保忠勝グループリーダーらは2017年6月26日、電圧により電気的に原子の形を変えることで超省エネ磁気メモリを実現する新しい原理を発見したことを発表した。
 従来はnmサイズの磁石を用いたメモリの駆動原理として電流通電が必要であったが、そこで発熱を極力抑えられる瞬時の電圧による磁極反転が期待されている。一方でこの電圧磁気効果は実用レベルに対し10分の1以下と小さく、新材料開発が望まれていた。
 今回の研究グループは、原子レベル(1000万分の2mm)で制御した鉄プラチナ人工磁石を作製。そして大型放射光施設Spring-8での実験と理論計算により、電圧による原子の変形が電圧磁気効果の増大につながる新原理を明らかました。
 本研究による知見を使った材料設計により将来的に現状比10倍の電圧磁気効果が可能となり、発熱を極力抑えられる超省エネ不揮発性メモリの実現が期待される。
 本研究開発チームは、これまでに1000万分の5mmと非常に薄い金属磁石に電圧をかけることで、磁極が向きやすい方向(磁気異方性)を制御する技術の開発に取り組んできた。しかし電圧により磁気異方性を変化させる効率は100以下と小さく、応用レベルに必要とされる1000を大きく下回っていた。そこで電圧磁気効果の機構解明と大きな電圧磁気効果を示す材料の開発が待ち望まれていた。  そこで、今回の研究の新規性は放射光X線を用いて初めて電圧磁気効果の機構解明を行った点、そしてこれにより電圧駆動型MRAMの材料設計指針を得た点にある。
 研究開発チームはまず高品質な鉄プラチナ人工磁石を作製した。スピン軌道相互作用が大きいことで知られるプラチナを有し、非常にきれいな結晶構造を形成できる鉄プラチナ磁石に着目した。図1(左図)は実験に用いた素子の電子顕微鏡による拡大断面写真です。狙い通りに鉄とプラチナが原子レベルで制御されていることがわかる。この高品質素子を使った実験は第一原理計算と呼ばれる理論計算との厳密な比較を可能にする。そして図1(右図)が示すように素子に電圧を印加しつつ、大型放射光施設Spring−8の磁性材料ビームラインおよび軟X線固体分光ビームラインで得られるX線を用いて、電圧磁気効果の原理解明の実験を行った。
 本研究開発チームは放射光X線を用いた実験と理論計算により、140の電圧磁気効果を示す鉄プラチナ磁石には2つの機構が混在すること、そして鉄プラチナ磁石は潜在的に1000を超える巨大な電圧磁気効果を既に有していることを発見した。(図2)  図3は電圧磁気効果の機構の模式図。原子は原子核とその回りを公転運動する電子から構成される。従来は電圧により原子の電子数が増減する機構Aが電圧磁気効果の主要因であると考えられてきた。一方で今回の研究では機構Bを新たに発見した。機構Bは原子の変形、より具体的には電圧による電子分布変化として理解され、実験的には磁気双極子モーメントの変化として観測される。本研究では電圧による磁気双極子モーメントの変化を大型放射光施設Spring-8での実験で観測ました。
 理論計算からは現状の鉄プラチナ磁石では機構Aと機構Bがほぼ相殺され、その結果として電圧磁気効果が140程度であることがわかった。図2に示したように機構AおよびB自体は既に1000を超える電圧磁気効果を有している。従って機構AとBが相乗する材料設計を行えば、将来的に応用レベルの電圧磁気効果1000を大きく超える材料開発が可能であることがわかった。
 このように今回の研究による知見を使った材料設計により、将来的に現状比10倍の電圧磁気効果が可能となり、発熱を極力抑えられる超省エネ不揮発性メモリの実現が期待される。今後、今回発見した材料設計指針をもとに実際に巨大電圧磁気効果を示す材料開発を行い、電圧駆動型MRAMの実現を目指す。

URL=http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2017/pr20170626/pr20170626.html


sansouken1
図1(左図)素子の電子顕微鏡写真。鉄とプラチナを原子レベルで制御した人工磁石を用いました。
(右図)鉄プラチナ磁石に電圧を印加し、大型放射光施設SPring−8のX線を用いて実験を行いました。
具体的には放射光X線を用いて鉄プラチナ磁石の軌道磁気モーメントおよび磁気双極子モーメントの
電圧印加に対する変化を評価しました。

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図2 鉄と酸化マグネシウムによる素子の電圧効果は30であるのに対し、鉄プラチナ磁石には
140の電圧効果があります。今回の研究により鉄プラチナ磁石の電圧効果には2つの機構が混在し、
既に1000を超す効果を潜在的に有することを見出しました。そして2つの機構の調節により巨大な
電圧効果が得られることがわかりました。


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図3 鉄プラチナ磁石の電圧効果には2つの機構が混在します。従来から知られていた機構A
(軌道磁気モーメント機構)は原子における電子数増減、新たに発見した機構B (磁気
双極子モーメント機構)は電子分布の変形で説明されます。本研究では放射光X線を用いた実験
により鉄プラチナ磁石の磁気双極子モーメントが印加電圧により誘起されることを見出しました。
このことから電圧磁気効果が電子分布の変形により起きていることがわかります。





 

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