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2017年6月5日

産総研、浮遊部を持つ微小構造を形成できる印刷技術を開発

  国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)フレキシブルエレクトロニクス研究センターは2017年6月1日、カンチレバーやブリッジなどの浮遊部を持つ微小構造を、印刷法により高効率・低コストで製造できる技術を開発したことを発表した。
 従来、このような微小な浮遊部の形成には、基板に接した部分を取り除いて宙に浮いた部分を残すエッチング法が用いられてきたが、製造工程数が多く、材料の無駄やエネルギーの消費量が課題であった。今回開発した技術では、必要な構造だけを基板に積み重ねて浮遊部を形成するため、製造にかかる時間を従来から80%削減し、省エネルギー・低コストでの製造を実現できる。このような浮遊部を持つ微小構造は、さまざまなセンサーの検出部として用いられるため、今回の技術によりセンサの大量導入が必要なIoTの本格的な社会実装への貢献が期待される。また基板には布地やゴムなどのさまざまな素材を使用でき、浮遊部の材料も選択の幅が広く、さらに目的に応じた形態の浮遊部を形成できるなど、プロセスの自由度も高い。また、開発した技術を用いて製作したヘッドマイク式呼吸センサは、公共交通機関のドライバーの眠気などの健康状態を従来とほぼ同じ装備で検出できる。
 産総研 フレキシブルエレクトロニクス研究センターでは、印刷技術を利用した高効率デバイス製造技術の研究開発に取り組んできた。幅広い素材を基板とする高効率なデバイス製造の実現を目指して、生産性の高い転写式印刷法を基に、付着力コントラスト印刷法や、スクリーンオフセット印刷法などの独自技術を生み出してきた。
 カンチレバーやブリッジのように浮遊部を持つ微小構造は、従来シリコン基板を元に加工形成されたものが主流であり、機械変位を起こしやすい構造上のメリットがセンサの検出部として有用なことが、特にMEMS分野で示されていた。一方、従来の印刷法は、3Dプリンターのようなスキャニング方式の小ロット生産技術を除き、形成できる構造は2次元形状に限られていた。そこで今回、量産に適した転写式印刷法を基に、浮遊部を持つ3次元的な構造を形成できる印刷技術の開発に取り組んだ。
 今回開発した技術は、ある層を転写する際に、層の一部分を接触させるだけでその層全体を転写し、結果として浮遊部を持つ構造を効率よく形成するものである。オフセット印刷法をベースに、必要な部分だけを乗せるように積層して浮遊部を持つ微小構造を作製する技術であるため、「Lift On-Offset Printing(LOOP:ループ)法」と命名した。ループ法でカンチレバー構造を形成する工程を、従来の半導体製造プロセスと併せて図1(a)、(b)に示す。オフセット印刷の要領で、ブランケットと呼ばれる仮基板に一度インクを印刷し、それを目的の基板へと転写する。この時ブランケット上に印刷された形状が、後の転写後に浮遊部となる。従来のオフセット印刷法と異なる点は、ブランケット上でインクを一度完全に硬化させ、転写に必要な粘着部を改めて印刷してから転写する点である。硬化された層は、転写後もブランケット上での形を維持するため、あらかじめ基板に設けた凸部に接触させて転写することで、基板から離れて宙に浮いた部分をもつ構造を形成できる。
 ループ法の利点は、製造が高効率であることに加えて、印刷に用いるインクに樹脂や機能性の粒子を添加することで、ヤング率が小さく柔らかい材料による構造形成や電子機能の付与など、浮遊部の特性を目的に応じて調整できる点がある。さらに、基板としてさまざまな素材を使用できる点もある。従来の半導体製造プロセスは、基板に高い平面精度が要求され、反応性のガス、あるいは酸性や塩基性の液体にさらされるため、基板として布地やゴムなどの素材を用いることは困難であった。ループ法は印刷技術に基づくため、半導体製造プロセスで用いられるガラス基板やシリコン基板だけではなく、例えばスポンジのような柔らかな素材の上にも浮遊部を持つ微小構造を形成できる。
 また、浮遊部を形成するための下敷きとして使われ後から除去される犠牲層や、エッチング用保護レジストのように"プロセス上、必然的に捨てられる材料"がないため材料利用効率が高く、製造工程数も従来の半導体製造プロセスから大幅に削減される。また、積層して転写する手法のため、輪転式印刷のような量産プロセスへの展開が容易であり、全工程が大気中で行われることからも、量産技術としての実用化に期待ができる。

URL=http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2017/pr20170601_2/pr20170601_2.html


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図1 カンチレバー構造を作る工程の概要 (a)新技術「ループ法」、
(b)半導体製造プロセス、および(c)2つのプロセスの全工程積算時間の比較


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図2 付着力スイッチング処理の有無による付着力の差 (a)測定の概要、(b)測定結果


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図3 (a)布地に形成した呼吸センサー用カンチレバー、
(b)センサー構成と呼気によるカンチレバーの変位の模式図、
(c)呼吸センサーを組み込んだヘッドマイクの外観、
(d)呼気検出の結果




 

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