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2017年3月1日

産総研、MRAMのための高性能参照層を開発

 産業技術総合研究所(産総研)のスピントロニクス研究センターは2017年2月28日、次世代の不揮発性メモリであるMRAMの参照層に、新たにIr(イリジウム)を用いたスペーサ層を用いて、大容量MRAMに求められる性能を達成したことを発表した。
 高性能な垂直磁化TMR素子は、大容量MRAMを実現するための中核技術であり、情報を記憶する「記憶層」、MgO(酸化マグネシウム)の「トンネル障壁層」、記憶層情報の判定基準である「参照層」により構成される。参照層は、上部強磁性体層、下部強磁性体層と、その2層の間の厚さ0.5 nm程度の極めて薄いスペーサ層からなり、判定基準の強固さ(参照層の強固さ)が求められる。スペーサ層は参照層の強固さに影響するが、今回、これまで広く用いられてきたRu(ルテニウム)の替わりにIrを用いたところ、Ruより強固な参照層特性が得られることを発見した。また、要求される性能を達成できるスペーサー層厚さの範囲が約2倍となったため、製造が容易になると考えられる。強固な参照層を与えるイリジウムのスペーサー層は、大容量MRAMにおいて現在標準的に用いられているルテニウムを一新するとともに、MRAMの大量生産に貢献すると期待される。
 今回開発した垂直磁化TMR素子の概略を図1に示す。垂直磁化TMR素子は、参照層/トンネル障壁層/記憶層を基本構成とし、各層の厚さは数nm程度と薄い。参照層は、上部強磁性体層、下部強磁性体層と、その2層の間のスペーサ層からなるが、スペーサ層(図中ではIrスペーサ)は0.5 nm程度と極めて薄い。
 参照層のような3層構造では、上部と下部の強磁性層が特徴的な磁気結合を持つ(層間交換結合)。特定のスペーサ材料(RuやIrなど)を0.5nm程度と薄くした場合には、上下の強磁性層の磁化方向が逆向き(反平行)の磁化配置の状態で強固に結合(反平行結合)する(図2)。反平行結合が強いと、参照層は強固になるので、図2に示した結合強さ(?Jex)を大きくする必要がある。代表図に示すように、TMR素子直径20nm以下のサイズのMRAMに必要なJexは、およそ1.8erg/cm2以上である。この値は、既存のRuスペーサを用いた参照層でも得られるが、ルテニウムスペーサの厚さは0.38nmから0.48nm程度までの0.1nmの範囲内に収まらなければならない。一方、今回開発したIrスペーサではJexの最大値が2.6erg/cm2と、Ruスペーサの最大値(2.2erg/cm2)に比べて約20%増加した。また、1.8erg/cm2以上を示すスペーサー厚さの範囲は0.38 nmから0.57 nm(0.19 nm)と、ルテニウムスペーサー厚さの範囲の約2倍に広がった。これは、大量生産では極めて重要な点であり、新世代の低消費電力メモリーMRAMの生産性向上に大きく貢献することが期待される。
 さらに、Irスペーサを用いたSTT-MRAMの性能評価を行ったところ、データ読出特性(MR比)やデータ書込特性、耐熱性など各種特性は、Ruスペーサの場合と遜色無く、スペーサ層をIrにすることで、性能の劣化は無く、参照層の強固さだけを高めることができた。20nm以下のサイズだけではなく全ての世代のSTT-MRAMや電圧トルクMRAM、さらにはスピントルク発振素子などの参照層は、イリジウムスペーサーに一新されるものと期待される。
 今回開発したイリジウムスペーサーを含む参照層は、広範囲なスピントロニクスデバイスに応用できる。今後は、この技術をベースにした大容量STT-MRAMの量産化技術の確立や、他のスピントロニクスデバイスへの応用を目指す。

URL=http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2017/pr20170228/pr20170228.html


001
図1 今回開発した参照層を含む垂直磁化TMR素子断面の模式図と電子顕微鏡像

002
図2 参照層の上下強磁性層の反平行磁化結合の模式図





 

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